当記事は、IT重説とは何かについて、メリット・デメリットと実際に受けた感想をあわせてご説明します。
- 進学・転勤などで県外に引っ越す方
- IT重説を実際に受けてみるとどうなのか気になる方
- IT重説で用意するものについて知りたい方
- 宅地建物取引士を取得済
- 宅地建物取引士として重要事項説明の経験あり
- 借主の立場で説明を受けた経験あり
アパート・マンションを借りるとき、マイホームを購入するときは、契約前に重要事項説明を受けます。
重要事項説明は、これまで店舗などでの対面形式のみでしたが、2017年10月1日から賃貸借取引でIT重説の運用が開始され、オンラインで受けられるようになりました。
(売買取引は、2021年4月から運用開始)
IT重説は、不動産会社の店舗が遠方でも、直接行く必要がなくなり交通費や時間の負担が減るなどのメリットがあります。
一方で、以下のような点が気になるのではないでしょうか?

内容はしっかり確認できるの?

何か用意するものはあるの?
このような点も宅建取得者である私が、実際に受けたことを踏まえてご説明します。
先に、結論を簡単に申し上げると以下の通りです。
- 交通費や時間の負担が減る
- 対面よりもリラックスして聞ける
- 微妙な仕草・表情の変化に気が付きにくい
- 内容の理解のしやすさは、対面形式と変わらない
- IT機器・IT環境の事前確認はしたほうが良い
※今回、私は直接店舗に行き、他店舗とやり取りする形式でIT重説をおこないました。
自宅など店舗以外の場所でおこなう場合は、IT環境・IT機器が必要です。
IT重説・重要事項説明とは?

まず、IT重説と重要事項説明とは何かについてご説明します。
IT重説とは?
不動産を契約する前の重要事項説明を、テレビ会議システムなどのITを活用してオンラインでおこなうこと
IT重説により、店舗に直接来店せずに重要事項説明を受けられるようになりました。
賃貸借取引では、2017年10月からIT重説の運用が開始され、売買取引でも2021年4月から運用が開始されました。
重要事項説明とは?
不動産を契約する前に、契約の解除や損害賠償に関することなどの取引にあたり重要なことを、宅地建物取引士が書面を交付して説明するもの
重要事項説明は宅地建物取引業法35条に規定されており、アパートを借りる、戸建てを購入するなどの不動産の賃貸借・売買の契約前には原則として必ずおこないます。
不動産の取引は高額でありながら、借主・買主は不動産に関する知識をあまり持っていないことは少なくありません。
物件に関する情報を理解できないまま契約することで、後日トラブルになる可能性があります。
そのため、安心して取引ができるように、不動産に関する知識が豊富な「宅地建物取引士」によって説明することが法律で決められているのです。
IT重説のメリット・デメリット

IT重説のメリット・デメリットには、どのようなものがあるのかご説明します。
IT重説のメリット
店舗に行く必要がない
これまでは重要事項説明を受けるために、直接店舗に行く必要がありました。

地方から都内への引っ越しで、1度内見のために行った。
でも、重要事項説明のためにもう1度都内に行かないといけない……
このように、遠方にいる方にとっては交通費や時間が負担になっていましたが、IT重説では自宅などでも受けられるようなり、店舗に行く必要がなくなりました。
また、対面方式ではないので、新型コロナウイルスの感染リスクも軽減できます。
日程調整が柔軟にできる
交通費や時間の負担が減ることにくわえて、借主・買主の方が日程を合わせやすくなりました。
休日以外にも、平日の仕事終わりに自宅で受けることもできます。
また、複数の店舗を経営をしている不動産会社にとってもメリットがあります。
他店舗の宅地建物取引士の方が移動せずに説明できるため、借主・買主の都合に合わせやすくなりました。
対面よりも緊張感・威圧感がない
不動産取引(とくに売買)は高額のため、重要事項説明や契約時は普段よりも緊張感があります。
また、対面による説明は威圧感があり、ストレスを感じる方もいるのではないかと思います。
IT重説は、対面によるストレスがなくなるため、リラックスでき、気になる点も質問しやすいでしょう。
重要事項説明書を事前に確認できる
IT重説を自宅などで受ける場合は、事前に重要事項説明書が送付されます。
事前に確認できることで内容の理解が深まり、トラブル防止にもつながる可能性があります。
IT重説のデメリット
IT環境の整備が必要
仲介人や売主となる不動産会社と借主・買主の両者が、スマホ・パソコンやインターネット環境といったIT環境を整える必要があります。
そのため、説明日までにIT環境を整えなければなりません。
機器のトラブルが起こる可能性
オンライン上でおこなうため、通信環境が悪くなると音声・画質に不具合が出るなどのトラブルが起こる可能性があります。
場合によっては説明が中断・延期され、対面方式よりも時間がかかるかもしれません。
IT重説に未対応の物件がある
IT重説は、運用が開始されてからまだ5年です。
そのため、すべての物件でIT重説に対応しているとは限りません。
- 不動産会社のIT環境が整備されていない
- 貸主・売主の同意を得ていない
たとえ借主・買主が希望しても、IT重説を受けられない点に注意です。

IT重説の対応物件は、不動産会社への問い合わせや、
SUUMOなどの不動産ポータルサイトでも確認できます。
IT重説の流れ
IT重説の流れを簡単にまとめると、以下のようになります。
(自宅など店舗以外で受けることを想定)
- 重要事項説明書などの書類が送付される
- 日時の確認・接続テスト
- IT重説開始
- 重要事項説明書などの書類に署名・捺印して返送
事前に不動産会社から、重要事項説明書などの書類の送付やテレビ会議システム(Zoomなど)についての説明があります。
トラブルを防ぐために、接続テストをおこなうと安心です。
重要事項説明では、最初に宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示しますが、IT重説では宅地建物取引士証を画面に提示します。
また、重要事項説明の終了後に契約に入るケースもあり、そのときは合わせて契約に関する説明もオンライン上でおこないます。
IT重説を受けた感想

ここからは、私が実際にIT重説を受けた感想をまとめました。
対面よりもリラックスして聞けた
まず感じたのが、対面よりもリラックスできたことです。
重要事項説明は宅地建物取引士がおこないますが、担当者が資格を持っているとは限りません。
もし1人で説明を受ける場合は、借主(買主):不動産会社=1:2となることで、緊張感や威圧感が少なからずあるでしょう。
リラックスして聞けることで、内容が頭に入り、気になる点も質問しやすいと思いました。
仕草・表情が小さいと相手側が気づかない
対面に比べると、微妙な仕草・表情の変化に相手側が気づきにくいと感じました。
私は、説明中に気になった点を質問しようとしたところ、仕草が小さいことで担当者の方が気づかずにそのまま読み進めてしまう場面がありました。
もし質問がある場合は、リアクションを大きく取るか、説明が終わったあとにまとめて聞いたほうがスムーズにいくと思います。
内容の理解のしやすさは対面と変わらない
内容の理解のしやすさは、対面形式でもIT重説でも変わらないと感じました。
IT重説でも説明する内容は対面方式と同じで、説明を受ける形式が変わるだけです。
実際に国土交通省の『IT重説実施直後のアンケート結果』では、約6割の方がIT重説と対面で理解のしやすさは変わりないと回答しています。
IT重説と対面での、重説の理解のしやすさに対する回答
対面で重要事項説明を受けた経験のある者に、IT重説と対面での重説の理解のしやすさについて尋ねたところ、約6割(60.2%)の者が「理解しやすさは同程度」であったと回答した。
対面での重説の方がわかりやすいとの回答は約3割(27.9%) 、IT重説の方がわかりやすいとの回答は約1割(11.8%)であった。
国土交通省『IT重説実施直後のアンケート結果』
交通費や時間の負担がなくなることを考えると、とくに遠方の方はIT重説によるメリットを感じやすいのではないかと思いました。

たとえば、新潟から東京に引っ越す場合は、交通費だけで約2万円かかります。
引っ越し代などを考えると、負担が減るのは大きいですね。
トラブル防止のために事前確認が必要
今後も、音声・画質に不具合が出るといったトラブルが起こる可能性はあるでしょう。
不動産会社もスケジュールの都合があるため、準備不足でトラブルが起こると迷惑をかけてしまいます。
もしトラブルで延期になった場合は、ご自身の負担も重くなります。
- 担当者から事前に操作方法を確認する
- カメラ・マイクのチェックをする
- 通信環境のチェックをする
上記のように事前確認をしっかりおこなえば、当日も安心です。
IT重説で用意するものは?

IT重説を受ける場合は、「IT機器」と「IT環境」を事前に用意する必要があります。
IT機器
- スマホまたはパソコン
- カメラ
- マイク
カメラ、マイクはパソコンに内蔵されていない場合に別途必要になります。
マイクが内蔵されているカメラであれば、設定にも時間がかからずに済みます。

IT環境
- インターネットが使えること(Wi-Fi、光回線、モバイル回線)
- Zoomなどのテレビ会議システム
どのテレビ会議システムを使用するかは不動産会社によって異なります。
アプリのダウンロードや操作方法の確認が必要になるので、担当者に確認しましょう。
また、喫茶店などの不特定多数の方がいる環境で説明を受けるのは危険です。
重要事項説明書は個人情報が記載されているため、情報が漏洩する可能性があるからです。
まとめ

ここまで、IT重説のメリット・デメリットや実際に受けた感想などをご説明しました。
直接店舗に行く必要がないため、交通費や時間の負担が減ります。
また、対面よりもリラックスして聞けると感じました。
- 進学、転勤により県外に引っ越す方
- 仕事が忙しく、不動産会社に行く時間が取れない方
- 対面での説明に抵抗がある方
このような方にとっては、IT重説のメリットをより感じるのではないかと思います。
当日のトラブルをできる限り防ぐために、IT機器とIT環境は事前に準備・確認をおこなえば安心です。
IT重説を受ける際には、当記事を参考にしていただけたら幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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